フィリップは…オレの息子は強い。

そう、思った。

心身共に強いと言った所か。
精神力もあるし、常に冷静で後先が考えられる。
3歳の頃からボクシングを始めた所為なのか、今ではプロ顔負けの強さにまで成長した。
おまけにオレよりも頭が良い…。正直、親として少し悲しい…。

勝ち続けの選手にありがちな『自信過剰』がフィリップにもあったが、一度こっぴどくやられてそれも克服した。


「フィリップ。お前にとってボクシングってのは何だ?」
ある日オレは息子にそう聞いた。いや、息子というより、男同士の真剣な話だ。
「…え。…何だよ、イキナリ。」
フィリップは少し困ったような顔をしてオレを見つめる。
「…試合しててどう思う?何か無いか?」
フィリップの顔が引き締まり、真剣になる。
「…試合…か。正直、オーディエンスがいるのは気が引けるぜ。」
「…見られるのは嫌か?」
「……ボクシングは見世物じゃねえ。…男と男の真剣勝負だ。それを騒ぎながら見られても困る。」
「…なるほどな。」
オレはふっと笑う。
「オレと同じだな。流石息子だ。」
笑いながらフィリップの綺麗な髪をわしわしと撫でる。

「お前、メディアは嫌いか?」
「嫌いだ。」
即答だった。本当にオレに似たんだな。
「父さんも嫌いだろ?」
「ああ。色々と面倒だし、時間も食うしな。時間がなくなるのだけは勘弁して欲しい。」
「…でも父さんの性格からしたら…ファンサービスくらい、しそうだけどな…」
フィリップは少し寂しそうな顔で言う。
「何だよ。オレをテレビの画面で見たいのか?」
「いや、別にそういうわけじゃ…」
「…オレなんてのは只でさえ試合とトレーニングで時間食ってるって言うのに、
テレビなんか出たら家にいる時間なくなるだろ。」
「…そうだけどよ。」
「家にいる時間が無いってことは、お前やキャサリン、チャーリー達と話す時間もなくなるだろ。
オレはそれが嫌でたまらないんだよ。
…お前はオレがメディアに出ないのは不満か?」
「いっ、いや、全然。」
フィリップは慌てて首を左右に振る。
「逆に何つうか…安心、した。」
「ほう?」
返事を一つ返し、言葉を促す。
「…父さんが、オレ達とのことちゃんと考えてて。」
「あのなあフィリップ。オレを誰だと思ってる。」
オレはフィリップの顔を両手で挟んで顔を寄せる。
「オレはお前たちの父ちゃんだぞ。お前達の事考えないでどうする。
それに、親父云々以前にもお前たちと話したり遊んだり買い物行ったりしたいんだよ。
…だったら、必要なのは時間だろうが。」
こつんと軽く頭突きをして元に直る。
「…ごめん、父さん。」
「謝ってどうすんだよ。お前は悪くなんか無いからな。」
言ってオレはまたフィリップの頭を大雑把に撫でる。

「ま、お前の真意が聞けて良かったぜ。…これからも頑張れよ。でも、間違った事はするな。」
"間違った事はするな"オレの口癖にもなってきている。
フィリップが何をしようと自由だが、間違った事だけはして欲しくない。だからオレはいつもそう言ってしまう。
だがフィリップは嫌な顔一つせずに、良い顔で良い返事を返した。
「…オレは、ジャスティスゲイルの息子だ。父さんの顔に泥を塗るような事はしない。」
真剣な眼差しでオレを見る。オレはそれに安心し、今度は優しくフィリップの頭を撫でる。
「その意気だ。」
フィリップは少し恥ずかしがりながらも、オレに微笑を返す。
「…じゃ、オレ実はキャサリンに遣い頼まれてるんだ。そろそろ行かないと怒られちまう。」
苦笑いを浮かべて少し後退る。
「オレも手伝うぜ。」
「そいつは頼もしいな!んじゃ早速行くぞ、ダッシュだ!!」
どたばたと行きつけのスーパーまで走って行った。


フィリップは強い。心身共に。チャーリーにとっても良い兄貴だし、不足は無い。

只一つ欠点なのが、友達が少ないって事だ。