そういう訳で、オレ達はツリーに飾るオーナメントを買う為に近所のデパートにまで行く事になった。
「いやぁ〜流石クリスマス!!そこら中にサンタがいるなあ〜!」
「お父さん、それ毎年言ってるよ!!」
はしゃぐ父さんとチャーリー。それを見てオレは笑った。
すると、どこかからか犬の鳴き声が聞こえてきた。
だがそれはどうもまともな声ではなく、何かがぶつかって、それで鳴いているように聞こえた。

「…犬の鳴き声だ。…普通じゃないぞ。」
父さんの眼光が鋭くなった。同時にオレも眼を細める。
「…ああ。助けを呼んでるような声だぜ。」
「探さなきゃ!!」
オレ達は声の出所を探し、そこまで行った。小さな路地裏だ。
そこにはチンピラのような男が二人。紐で細い柱に繋げられた犬を蹴って遊んでいた。

「おい!…大の大人2人が動物虐待か…?!」
父さんは怒っていた。静かに。しかし深く。
「何て酷い事するんだ!!!」
「抵抗も反論も出来ないような動物に一方的に危害加えるとはな。…最低だぜ。」
オレたちも当然怒っている。相手が誰だろうと、オレたちには関係ない。
チンピラ二人は気だるそうにこちらを向き、唇をひん剥かせる。
「誰だァてめえら。」
「…どっかで見たような面だなオッサン。」
「黙れ。何故こんな事をしている。」
父さんはその性格から、怒鳴りつけるような人間に見える。だが、本質は真逆だ。
深く静かに、冷静に。だが的を射抜く鋭さがある。

「あんたにゃ関係ないだろうがよ。」
「ならお前たちはその犬に関係のある人間なのか…?」
「五月蠅えオッサンだなァ。保健所の手伝いだよ、手伝い。」
「何が手伝いだッ!!只の虐待だろう!!」
間にチャーリーが入った。そこにオレも入る。
「やられてる方の身にもなってみろ。拷問とかわんねえんだぞ。」
「…今ここから立ち去れば許してやる。…そうでなければ…お前たちどうなるか解らんぞ…!!」
父さんは正しい道を進むなら、プロのライセンス何て関係ない。不正を正す為にその拳を振るうだろう。
それがジャスティスゲイルだ。オレたちの父だ。
「…あァ…?」
チンピラ二人は嫌そうな顔をしながら小さく歩を進める。
一人が父さんの横を通り過ぎ、もう一人が父さんの前を通ろうとした瞬間。


バスッ


…何か音がした。何だろう。例えるなら、枕を何かで刺した様な音。
「FUCK YOU」
残りのチンピラは悪態と唾を吐いて去っていった。
「…あんな人たちがいるなんて…!!」
チャーリーが去っていったチンピラを見て怒りを顕にする。
「SHIT…!」
同じくしてオレもチンピラを見ながら軽く悪態を吐く。
すると横からどさっと音がした。その音にオレ達は振り返る。
「父さん……?!」
「お、お父さんっ?!」
父さんが倒れていた。…どうしたんだ…?!

急いで抱き起こして様子を伺う。顔は失神をしているかのように眼が開いたまま。
「父さん…?!おいッ!!」
「お父さんっ、お父さんっ?!」
オレは父さんの頬を叩く。しかし反応は全くなく、同じ表情のまま。
「……………………血の匂い……?」
父さんからわずかに血の匂いがして、慌てて身体を調べる。
よくよく見ると、胸の辺りから血が流れているのが解った。
「なッ…?!まさかッ…!!!」
嫌な予感がしてオレは父さんの黒いコートを脱がせる。
脱がせたそこには血がどくどくと流れ、その中心には小さく穴が開いていた。
「お…父さ……っ?」
チャーリーは顔面蒼白で、眼に涙を溜めていた。

「………父さん……?」
オレは頭の中が滅茶苦茶になっていた。
…何が起きた…?!何故父さんは倒れてる?何故血を流してる?何故チャーリーは泣いてる?


考えたくない。
何が起きたかなんて。


考えたくない。考えたくない。考えたくない。


考えたくない。





父さんが死んだ?


まさか。


父さんが…あのジャスティスゲイルが死んだだって?








ざけんな。



そんなモン…嘘だ。


誰が信じるか。

信じたくない。



誰か嘘だって言ってくれ。



父さんは生きてるって言ってくれ。







返事をしてくれ。
父さん

父さん


父さん



父さん







「フィリップっ…!!!!」
眼一杯に溜めた涙はボロボロと流れ、チャーリーの頬を濡らす。


なあチャーリー。嘘だって言ってくれ。


「お父さんがッ…お父さんがぁッ…!!!!」



嘘だ。



「うッ…どんどんっ…顔が蒼くなってくよぉッ…!!!!」



嘘だ。



「お父さんッ…ぅっ…!!し…死んじゃっ…た…ッ!!!!」
「嘘だッ!!!!!!」
「ぅ…っ…嘘じゃ…ないッ…!!」
「嘘に決まってる…!!父さんは死んでない!!…死んでない…ッ!!」
必死に父さんの脈を図るが、反応があるわけも無く。父さんはただただ冷たくなっていく。
「う…嘘…だッ……!!!」
「うっ…うええええっ…」




信じられない。

信じたくない。

嘘だ。

嘘だ。

嘘

だ。














「…父さ…っ…父さんっ……父さんッ…父さんッ!父さん!!父さん!!!父さん!!!!父さんッ!!!!!」
堰を切ったようにとめどなく涙が流れる。



大好きなオレの英雄。
大好きなオレの父親。



























死んだ。